第33章 ~拾陸~INVADE
「はいは~い 準備はいいっスか~?」
パンパンと手を叩きながら言う喜助に三人は向き直った
「漸く出来たみたいっスね……準備」
喜助は帽子を深く被ると踵を返した
「さて、それではこれから虚圏の道を開きますよぉ 危ないからもう少し下がって」
喜助は準備された大きな杭の上に立つ
「店長!!こちらOKです」
「はいはーい!!さて…それじゃぁ」
カツンと杖で杭を鳴らすと喜助はその場に屈む
「我が右手に界境を繋ぐ石 我が左手に実存を縛る刃 黒髪の羊飼い 縛り首の椅子叢雲来たりて 我・鴇を打つ」
言霊を詠唱し、霊力を込めると一護達の目の前に大きな黒い穴が出現した
「破面達が往き来するこの穴は名を黒腔(ガルガンタ)と言います。中に道はなく霊子の乱気流が渦巻いています
霊子で足場を作って進んでください 暗がりに向かって進めば虚圏に着く筈です」
「浦原さん…ずっと研究室に籠ってたって聞いたけどアンタこの方法を調べてたのか」
「…アタシもいつまでも落ち込んでばっかもいられませんから」
「そうか…あのさ、もし井上が来たら心配するなってつっといてくれ。必ずサラを連れて帰ってくる。だから泣くなって」
「彼女は一度狙われてますから連れていけませんからね…分かりました黒崎サン…宜しくお願いします」
深々と頭を下げる喜助は微かにに手が震えているようで…
一護にしか汲み取れない喜助の心情が痛いほど伝わってきた
「あぁ…行くぜ!!」
一護の声と共にチャド、石田も黒腔へ向けて駆け出した
三人を飲み込んだ黒腔はパキッと音をたて姿を消すと、元の空間へと戻る
「お願いします…」
喜助は一護達が消えた空間をいつまでも見つめていた
そして大きく伸びをすると深呼吸をした
「店長…」
「テッサイさん…すいませんでした。もう大丈夫ッス」
「…ご無理はなさらないように」
ヘラッと笑う喜助にテッサイも小さく笑みを返した
「さて…アタシはアタシの仕事をしますかね」