第32章 ~拾伍半~NEW WORLD2
「どうして私が善人に見せていたか解るかい?」
「…貴方は自分が悪だと?」
藍染はククッと笑うと私の頬に手を添える
「君達が望むからだ。だから君達の望む善に応えた
不安だと言えば優しい言葉を掛け、甘えられないなら素直にさせ…私には寄り添って欲しいのか抱き寄せて欲しいのか手に取るように分かったからね」
藍染は手を滑らせると首筋に指を這わす
「では何故人は善を望む?不確かな安定が永遠であると思いたいからだ。人から与えられる好意が永遠であると思いたいからだ
自分が善人でも無いのに他人には善である事を求める…何とも皮肉だな」
藍染は黙っている私の上着を脱がすと肩にキスを落とす
「…それでも私はあの時の貴方も貴方だと思いたい…」
ポツリと呟いた私に藍染は喉で笑い顔を近付ける
「君は本当に美しい…心も、この瞳も真っ直ぐで…だが所詮、善などというものは存続維持出来る程度でしか守られない」
藍染は更に顔を近付ける。距離がお互いの吐息がかかる所まで来ると私は口を開いた
「究極の善を織る者は同時に究極の悪を織る者…」
私は初めて藍染に笑みを見せる
「藍染惣右介…貴方って本当に意地悪ね…」
それは闇を隠すのに十分な程に偽りの光に満ちた笑みだった