第31章 ~拾伍~NEW WORLD
光の元で惜し気もなく振りまいていた笑顔は今は何処にも無く、闇の中で藍染の加虐心を刺激する
「…やはり君を此処に連れてきて良かった」
あぁ…この人は作り上げた私の心を崩していく
サラは悔しそうに藍染を見る。その震える瞳は藍染を引き付けた
「…だから君は美しい」
長いしなやかな指で頬の輪郭をなぞる
不信感と不安感にサラは無意識に身を引こうとすると、気付いたのかその指が離れ抱きしめられる
「あ…いぜ…ん様…」
藍染は目を細め、顎に手を添えると持ち上げ目線をあわせる
「恐がらなくていい…今日はここまでだ」
藍染はサラの唇を指でなぞると優しく口づける
不思議と感覚はなかった
いや、何も感じないようにしてるのだ
そうすれば何も考えなくていい
サラはゆっくりと目を閉じると藍染にその身を預けた
・
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藍染の部屋を出て掛けられた声に振り返る
「ギン…」
ずっと居たのだろうか、ギンは壁に凭れ地べたに座っていた
「いつから居たの?」
「さぁ…どれくらいやろ」
(また同じ会話…)
「…戻ろか」
ギンは立ち上がると前を歩いていくのに私も付いていく
長い距離を二人は無言で歩いていく
でもそこには重々しい空気も気まずさもなかった
後ろから見るギンの姿は私の蟠った気持ちを少しだけ解してくれた
「ギン…ありがとう」
「……何が?」
「ううん、何でもない」
「……そか」
それだけの会話
それ以上話すことは無かった
でも私にとってそれ以上、何も聴いてこないギンの優しさに心の中でまたありがとうと呟くのだった