第30章 ~拾柶半~GOOD-BYE2
部屋に戻ると着替えを済ませウルキオラに渡されたブレスレットに手を通す
(…これで私は誰にも判らなくなるのね)
私は喜助さんの元へと近寄る。喜助さんは寝息をたて、起きる様子はない
「喜助さん…私は貴方のお陰で今まで幸せでした。貴方が私を見つけてくれたから私はここまでこれた…」
夢なら夢のままでと願いすらした二人の想い出が走馬灯の様に駆け巡る
そんな姿をもう見たくなくて目を閉じると、犯した罪の重さを思い知らされるかの様に喜助さんの笑顔が叩きつけられる
「……どうしても貴女は私の中から消えてはくれないんですね…」
私は床に膝を付いて喜助さんの手に触れる
ぎゅっと重ねた手に力を入れた私は、唇を重ねるようにゆっくりと顔を近づけた
唇が重なるその時、ポツっと喜助の頬に水滴が零れ落ちた
私はそれに驚き顔を離す。私の瞳からは涙が零れていた
「(私ったら決めたそばから…)ホント駄目ね…」
私は涙を拭うと薬指の指輪を外す
「私が作った物じゃないけど…お返しです。私はもう貰いましたから」
そう言って喜助さんの手に握らせ立ち上がると、私はドアに手をかけた
「ありがとう喜助…さよなら」
微笑んだサラは最後に喜助をジッと眺め、きゅっと瞳を閉じた後、決意を固めた表情を浮かべその場を後にした
指定の場所へ行くとウルキオラが立っていた
「別れはすんだか」
「ええ…」
ウルキオラは空間を割いて虚圏への道を開く
「お前を今から虚圏へ移送する。中へ入れ」
私は一度後ろを振り返ると、そこから逃げる様に裂目へと入っていった
そんなサラをウルキオラは少し見つめると、空間を閉じ、その場には静寂だけが残された
月はもう跡形も無くなっていて、空には太陽が登りだし陽の光が辺りを照らしていた