第30章 ~拾柶半~GOOD-BYE2
その言葉を聞いた喜助さんはフフッと笑った
「お返しなんて。…ただ、アタシはお礼がしたかっただけっスよ」
「…お礼?」
私はその言葉に顔を上げた
「アタシが、サラさんより何百年多く生きているか知っていますか?」
喜助さんの突然の問いに、私は困った顔になる
「…いいえ、わかりません」
そうでしょうねぇ、と喜助さんは笑って見せた
「アタシみたいに死神として何百年も生きていると、当然生きることに飽きる
化学者なんかやってたせいかアタシは他の人よりそれが顕著なんですよ」
喜助さんは自分の胸のあたりを指さした
「…ここがね、膿んでくるのがわかるんですよ。心の中が擦れて澱んでいく。そして自分のなかの狡い、汚い部分ばかりが成長していく…」
喜助さんは、そう言うと私を見つめた
「さっき、扉を開けて月を眺めるサラさんを見ていたとき、なんていうか…改めて、思ったんです」
嗚呼、アタシはこのひとに恋をしている――