第29章 ~拾柶~GOOD-BYE
浦原商店の勉強部屋に一角の絶叫が響き渡る
「もういいっつってんだろが!放せっ!!」
「そういう訳にはまいりませぬ!!」
嫌がる一角をテッサイが押さえ込んで治療が行われていた
「うるせぇ!いーんだよ元々大したケガじゃね゛ェ!?」
騒ぎ立てる一角の首をゴキッと背後から雨が押さえ込んだ
「でかしましたぞウルル殿!!そのままオトしてしまいましょう!」
「一角!くそッ一角を放せ!!」
全身包帯でぐるぐる巻きの弓親が暴れている
「ケガ人は大人しくお願いしますぞ綾瀬川殿!」
「やれやれ…どこへ行ってもうるせぇ連中だ」
そんな光景を眺めて呟くと喜助の姿が目に映った
(浦原喜助…得体の知れねぇ男だ。破面共が消えてからずっと何事か考え込んでるが…
それにしてもあの数の十刃が襲来してこれだけの被害で済んだのは運が良かった。見込みが甘かったんだ。奴らの準備は既に整っている
こっちも戦いの準備を急がなきゃならねぇ。だが今から急いだところで万端整えるまでの時間をどれだけ縮めれるか――)
冬獅郎は顔を上げ伝令神機を握る乱菊のほうを見た
「松本!!尸魂界との連絡はついたか!?」
「それが…」
伝霊神機は雑音が流れるだけで機能しない状態だった
そんな時、サラが勉強部屋に姿を現す
「サラさん…昨日は随分遅いお帰りだったみたいッスね。朝方じゃありませんでした?」
「ええ…昨日は満月だったから月華と対話してたの。そしたら朝になってて」
「ならもう少し寝てたらどうです?まだ昼前ですし…」
「大丈夫です。何だか凄く元気なんですよ♪皆の手当も手伝いたいし…あ、先に昼ご飯作ってきますね?」
サラはニコッと笑うと勉強部屋を出ていった
喜助はサラに手を振るとまた考え事を始める
空元気、満面の笑み、サラの演技は完璧で自分達の事に夢中な皆はサラの変化に誰一人気付かなかった