第29章 ~拾柶~GOOD-BYE
所定の時間にはまだある。命令違反をしたつもりもない。織姫は焦り出す
「ぁ…待って下さい!!まだお別れしてなくて――」
「命令変更だ…お前を連れていく件は無くなった」
「え…どうし――」
「"はい"とだけと言わなかったか…」
その言葉に織姫の額から汗が伝う
「……はい…」
「確かに命令は無くなったがお前の力を諦めた訳ではない。それを忘れるな」
ウルキオラは織姫の手からブレスレットを外す
「この腕輪の事は他言無用だ。言えば…解るな」
織姫は威圧感に押し潰されそうになりながら頷くとウルキオラは姿を消した
織姫は訳が解らないまま暫く立ちつくしていた
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サラの元にウルキオラが姿を現す
「……返答は」
「…あの女の霊圧を感じる筈だ」
「なら成立ね。解ってると思うけど織姫にはもう手を出さない…守って」
「…藍染様は嘘を付くお方ではない」
「それならいいの。行きましょうか」
「いや、お前を虚圏に連れていくのは一週間後だ」
「……何故?」
「藍染様のお慈悲だ。せめてもの一週間仲間と過ごせと仰った」
そう言うとウルキオラは先程織姫から回収したブレスレットを渡す
「これは?」
「これを付けると破面にしか姿を認識出来なくなる。一週間後の日の出までにそれを付けて此処に来い」
ウルキオラはそれだけ伝えると帰っていった
「……今すぐ連れていってくれたらいいのに…どこまでも酷い人ね…」
私の折角造り上げた覚悟はアッサリと崩されてしまう
人の心を読み取る事に長けている藍染は私のそれを見抜いたのだろう
それは優しさではなく遊び
お気に入りとは名ばかりのコレクション
私はゆっくりと空を見上げた。そこには悠然と輝く月
「そっか…今日は満月だったのね」
月の光は人の心に住む狂気を呼び覚ます
その為に満月の夜は罪を犯す人が増えるという
「私のする事も罪かしら…」
でもこの方法でしか皆を護る事が出来ない
サラは吸い込まれる様にいつまでも月を見つめ続けていた