第20章 ~拾半~EIGHT2
「一護は虚なんかじゃないわ。一護は一護よ」
「なら何で平子に協力する様な事してんだよ!!そういや仲よさそうだもんな?」
隻を切ったかの様に一度口にした想いは止まらなくなる
「アイツに仲間に引き込む様に頼まれたんだろ?だから心配する様な真似してオレを説得してんだ…郷に入っては郷に従えって言うもんな!?オレは虚だから虚の所に行けってそう言いたいんだ―――」
その瞬間、一護の頬に痛みが走る。その痛みの理由を知るのに時間はかからなかった
顔を上げると頬を叩いた筈の本人の方が痛そうな顔をしていてその目には涙が浮かんでいた
「ぁ…オレ…」
「どうして…どうして自分で自分を苦しめるの?そんな一護見たくない…私の知ってる一護はそんなんじゃない…」
「……サラの知ってるオレって?」
「どんな屈強にも挑んでいく真っ直ぐで強い心を持っている…」
「違う…オレはそんな出来た人間じゃ―――」
「そうならなきゃいけなかったんでしょ?あいにく私は虚化と縁は無いしアナタの気持ちを解ったふりなんてしない…同情なんかでこんな事言わないわ」
「ならどうしてアイツに協力する様な事…」
「私は私の意思で話してるの。一護…アナタはこれからどうしたいの?」
「オレは…わかんねぇ…自分でどうしたいのか全然わかんねえんだ」
「……なら力をつけなさい」
「...力をつけたって虚化が止まるわけじゃねぇよ」
「本当に解ってないの?私が言ってるのは力を制する力…今のアナタに一番必要なモノよ」
「力を…制する?それって…」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず……私に言えるのはそこまでよ。後は一護が決める事だから…」
私は一護の頬に手を添え叩いた箇所を撫でる
「最近あまり寝てないでしょう?幸い保健医はいないし少し眠った方がいいわ…」
私はそう言うと保健室を出ていった
「………」
一護は言われるがままにベッドに倒れ込みそっと目を瞑った
「力を制する力…―――」
そう呟くとそのまま意識が遠くなり眠ってしまう
心の中の蟠りは無くなっていないが、サラに心中をぶつけたせいか、久々に眠る事が出来たのであった