第14章 ~漆半々~GO3
その頃ルキアは懺罪宮から処刑場である双極の丘に移送されるべく四深牢近くの浅橋を進んでいた
「ルキアちゃん元気無いなァ?」
突如として白い廊下に気配なく一人の男が現れる
「―――市丸…ギン…!!」
「…あかんなァ。他隊とは言え隊長を呼び捨てんのは…お兄ちゃんに言いつけるで?」
「…申し訳ありませんでした…市丸隊長…」
「ええって!!冗談やん。お兄ちゃん怖いからなァ。よう言わんわ♪」
ルキアは自分を見て笑うギンを見て思う
貼り付けたような笑顔で語る男
この男が嫌いだった
細い目が向ける視線が絡みつくようで
殺気がまとわりついている気がして
そして本気でも無いのにサラに付きまとう男
この男が嫌いだった
「…市丸隊長…何故このような処に…?」
「ちょっとイジワルしに」
ルキアはその言葉に不信感を募らせ自然と眉間に皺がよる
だがそんな表情を一瞬にして解く一言を浴びせられる
「助けたろか?」
「!?」
隊「市丸隊長!?何をおっしゃって…」
移送を担当している執行人達は驚き少し身構える
「ボクやったらこんな見張り散らして君を助け出すのは訳無いで?」
「…な………」
「ウ・ソ♪」
信じ難い科白をあっさりと否定するギンは口角を上げる
「言ったやろ?…"イジワルしに"って…」
今から死にに行く自分を悔いることをせず有るがままに受け入れている筈だったのに
揺るがされた
希望を散らつかせられ
生きたいと願ってしまった
「あ…あ…あぁぁあッッ!!」
去り行くギンの背後にルキアの慟哭が響いた――