第9章 ~伍半~NEW2
淡淡と答える女を前にオレは声を荒げた
「ば…バカかテメエ!?じゃあこんな所ウロウロしてねぇでさっさと片付けに行けよ!!」
「いや…それが先程から、どういう訳かそいつの気配を全く感じなくなってしまったのだ…」
「な…何だよそれどういう……」
すると突然唸り声が聴こえオレは体が圧迫される感覚を覚える
「おいっ!!今の声…凄ぇ声聞こえなかったか!?」
「凄い声?そんなものいつ…」
女はオレに遅れて唸り声を耳にする
「聞こえた!!これは間違いなく虚の声!!私が片付ける…貴様は此処に居ろ!!」
唸り声に続き、遊子の悲鳴が聞こえ女は駆け出す
「遊子!?おいっこれを解け!!…襲われてんのはオレの家族だぞ!?」
オレは見向きもしない女に舌打ちをすると、人間の力じゃ決して解けない縛道を無理矢理解き、金属バットを手に持ち一階へと駆け降りていった
居間を見渡せば部屋中めちゃくちゃで血が飛び散り、傍らには背中から血を流す父親の姿に怪我をした夏梨
そして壁に空いた大きな穴の向こうに巨大な影を見つける
「なんだよ...これ...」
その光景にオレは全身が震え必死に震えを止めようとするがどうしても止まらない
だが虚の手に遊子の姿を見つけ殴りかかろうとすると、女が刀で虚の腕を斬り遊子が虚から解放された
「おいっ遊子!?大丈夫か!?」
「狼狽えるな小僧!貴様の家族はまだ誰一人、奴に魂を喰われてはおらん!」
「喰われていない…?」