第8章 ~伍~NEW
「…ただいま~……」
まだ朝早いせいか家の中はシンとしている
私が部屋に向かおうとした時、背後から声が聞こえる
「お帰りなさいサラさん」
「キャア!!き…喜助さん…」
振り返ると喜助さんが笑みを浮かべて立っていた
「入学して早々朝帰りッスか?」
「ぁ…ぇと、怒ってます?」
「怒ってませんよ~…ただ朝帰りなんていい度胸だなって思っただけッスよ」
喜助さんの笑顔に私は顔が引きつり、背中に冷たい物が流れる
私は壁際に追いやられると喜助さんはダンッとわざと大きな音を立てて私の顔の横に両手をついた
「ご...ごめんなさい!!でも凄い雨で一護の家族が泊まっていいって言ったから……あっ…」
私は余計な事を言ってしまったと慌てて両手で口を押さえる
「……イチゴ?」
「……苺ちゃんです…」
私は喜助さんから目を逸らし苦し紛れに呟く
「へぇ…男の家に泊まったんスか~…本当にいい度胸だ…」
喜助さんそう呟くと私の耳朶を軽く噛んだ
「……!?喜助さん!?おイタが過ぎます~ッ!///」
私は真っ赤になり逃れようとするも喜助さんは離してくれない
「おイタ?私は本気です…」
喜助は掠れた声を出し私の耳に息を吹きかける
「~~///ごめんなさい!!もぅ許して…」
その瞬間、私と喜助さんの間に黒い物が横切り、喜助さんは突然の頬の痛みに驚き離れる
「夜一さん…」
「サラ…さっさと準備して学校へ行け!!遅刻するぞ?」
「は…はい」
私は夜一さんの言い方にビクッと体を強張らせると部屋へと駆けていった
「夜一さん…痛いッスよ…」
喜助の頬には夜一の爪痕が赤くくっきり残っていた
「馬鹿者、何を熱くなっておる…御主らしくないぞ!?」
「…すみません」
俯いて表情こそ見えないが、夜一には喜助が愛する者に嫉妬をする姿にしか見えなかった