第2章 ~壱~MEET
「もう疲れたんです子供もお守は。ボクも仕事が忙しいし...だからもうボクの事は忘れて下さい」
俯くサラの顔は自分からは見えない
もう言うコトはない、踵を返し立ち去ろうとした時、
「...喜助さんは優しいね」
思わず足を止めてしまった
早くココを立ち去らねば...
そう思うのに足が動かない
「そう思うならわざわざ来なきゃいいのに...ちゃんと伝えに来てくれた、それで十分だよ」
いつも間にこの子は成長していたのか
いや、ボクを困らせないように気を使ってるのか
「喜助さんは私に生きる希望を与えてくれた、幸せを与えてくれた....笑顔をくれた...それで、大丈夫」
サラのすすり泣く声が聞こえる
ボクは唇を噛みしめてそれに耐える
「今までありがとう喜助さん...大好き」
「―――――!!!」
次の瞬間にはボクはサラを強く抱きしめていた
ああ...ダメッスね本当に
ちゃんとサラから離れようと思っていたのに
離れられないのは自分の方じゃないか
違う
そうじゃない
そうじゃないんだ...
感謝するのはボクの方だ....
「....ごめん...」
か細い声で呟かれた言葉
それが何に対することなのか、サラが尋ねようと顔を上げたその時、額に温かいものが触れる
「喜...助さん?」
喜助の唇だと思ったときにはそれはもう離れていて、
お互いにゆっくりと視線を絡ませた
「おまじないッス。頑張れって...相手を笑顔にする...サラは笑った顔が一番なんだから」
「うん...喜助さん...大好きだからね」
サラが笑うと、喜助は少しだけ笑みを浮かべてそのまま立ち去った
サラは喜助が立ち去った方角をずっと見つめていた
どんな思いで自分に会いにきたのか...
言葉と裏腹だった表情、何かがあったことは明白だったが、サラにはそれを聞くことが出来なかった
ふと、違和感を感じ、袖の懐に手を入れる
そこには宝石のような石がついた首飾りが入っていた
細い金色の鎖に淡い緑の石
それは誰かを思わせるようなものだった
「キレイ....」
サラの呟きは涙と共に、地面に落ちて行った