第2章 ~壱~MEET
「...ありがとうございます、夜一さん」
なんとか逃げ果せ、息をつく喜助に顔を覆っていた布を取った夜一が眉を潜める
「礼なぞいらん...八人は全員此処に運んでおいた、さっさとやってしまうがよい」
「...何もかもお見通しッスね、いやらしい人だ」
「御前がいうかっ!」
「今から二十時間で霊圧遮断型義骸を作ります。そして、アタシは現世に身を潜め、時間をかけて解き明かします...
この〝虚化”を止める方法を――――――」
それから十数時間...
喜助は予定より早く義骸を作り終え、一点を見つめていた
「もう終わったのか?ならすぐにでも此処を離れるといい」
「あの...少しだけ、ココを離れてもいいッスか?」
「何を言う浦原殿!!貴方は追われてる身なんですぞ!?こうしてる間にも...」
「それでも!!...行かなくちゃいけないんス...」
「.....行ってこい喜助」
「夜一殿!?」
「仮にも隊長じゃ、それくらい造作もなかろう...本来なら儂も行きたい所じゃがお主に任す...最後じゃからな」
喜助は静かに微笑むと、その場から立ち去った
「.....浦原殿のあんな姿、初めてです。相手は恋人か何かですかな?」
「いや、恋人よりも...もっと大事でかけがえのない宝物じゃ...お互い苦しいのう...」
―――――――なぁ...喜助.......
空がゆっくり茜色を差し始めた頃...
表の戸を閉めようと、外に出たサラは見知った人物に思わず声を上げた
「喜助さん!?」
嬉しそうに近づくサラに、喜助は黙ったままで
「どうしたの?お仕事...終わったの?」
いつまで経っても話さない喜助にサラの表情も困惑していく
「喜助...さん?」
「....今日はお別れを言いにきたんスよ」
その言葉にサラの顔は一瞬で固まった
「お別れ...?」
「ええ、冷静になったら何を固執していたのかなって。あれだけのコトを教えたんだ...もうアタシがいなくても大丈夫でしょ?」
喜助はここに来る間考えた
いきなり別れを切り出されたサラはどうなるのか
こんないたいけな少女を独りにしてしまう
どうせ独りにするなら
サラの心に残らなければいい