• テキストサイズ

桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第10章 I.


「あ、そう言えば…」

翔さんの家が遠く見えなくなったところで、俺はポケットの中に捻じ込んだ封筒を取り出した。

「何です、それ」

「翔さんのお母さんからなんだけど…」

改めて封筒の中を覗き、中身を膝の上に出した。

「嘘だろ…?」

封筒の中には、現金が10万円と、翔さん名義の通帳と印鑑、それにキャッシュカード、後は…マンションのカードキーが入っていた。

俺は恐る恐る通帳を開いた。

「マジか…」

そこには見たこともないような数字が並んでいて、俺の通帳を持つ手が少しだけ震えたのを感じた。

「どうしようニノ…。こんなの預かれないよ…」

俺は震える手で現金と通帳を封筒に戻すと、情けない声を上げた。

「まあ、確かにね…」

「だろ? それこそ金目当てだって思われそうじゃん?」

「でもさ、考えてもご覧よ? 今後のこと考えるとさ、必要なんじゃないですか?」

それはそうだけど…

”金目当て”だなんて、誤解はされたくないんだ。

「とりあえずさ、預かっといたら? で、最悪…」

言いかけてニノが先の言葉を飲み込んだ。

でも言わなくても俺には分かる。

今はいい。
俺がバイトの間はニノが翔さんを見ててくれるから…

でもこの先のことなんて、はっきり言って想像もつかない。

「はあ…、分かった。一応預かっておくよ」

溜息を一つ落として、俺は封筒をポケットにまた捻じ込んだ。


I.ー完ー
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp