桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第10章 I.
怒りからなんだろうか、硬く握った拳がプルプルと震えた。
酷い、あまりにも冷たすぎるんじゃないか…
翔さんがあんなにも苦しんでいるのに…
意味の分からない恐怖に怯えてるのに…
それを金目的だなんて…
そんな酷いことを、どうして親が言えるんだろう…
ヤバい…、泣きそうだ俺…
鼻の奥がツンと痛くなるのを感じて、俺は慌ててセーターの袖で鼻を擦った。
この人に何を言ったところで、きっと無駄だ。
それならいっそのこと…
「分かりました。翔さんのことは、俺が何とかします。突然訪ねて来て、こんな話…すいませんでした。翔さん連れて帰ります」
俺はその場で二人に向かって深々と頭を下げると、居心地の悪いリビングを出て、翔さんの自室へと向かった。
まだ眠っているかもしれない…
翔さんを起こさないように、ノックをすることなくドアを開けた。
「翔さんは…まだ寝てるか…」
「話は? 済んだの? どうなったの?」
矢継ぎ早にニノが言うけど、俺はそれを無視して、ベッドに横たわる翔さんを抱き上げた。
「ニノ、帰るよ?」
「…分かった」
俺の気持を察したのか、ニノが荷物を纏めてから、俺の腕の中の翔さんにコートをかけた。