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桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第9章 A..


「……まぁっ!」

駆け付けた”お母さん”が、一瞬息を吞んで、口を両手で覆った。

「あ…あなた、翔が…!」

驚き、なんだろうな…?
その声は震えている。

「ああ、どうしたらいいのかしら…」

”お母さん”はオロオロとその場を何度も行ったり来たりで…

時折俺を見ては、まるで汚い物でも見るように、顔を背けた。

見るなよ…
見ないでくれよ…

「そんな目で俺を見るな…!」

俺は床に尻を付けたまま、そのばから逃れるように後ずさる。

「見ないで下さい…、お願いだから…見ないで…」

涙が後から後から溢れて止まらない。

壁に丸めた背中を預け、抱えた膝に顔を埋める。

誰か助けて…!

「翔さん、大丈夫だから…、ね? 落ち着いて?」

俺を包み込む腕と、宥めるように囁きかける声…

「雅…紀…? 雅…、俺どうしちゃったの? なぁ、俺…俺っ…」

「大丈夫。俺が付いてるから、ね? ほら、捕まって?」

雅紀が俺の手を引き、自分の首に巻き付ける。

「あの、翔さんの部屋は…」

「あ、は、はい、こちらです…」

身体がフワッと浮き上がるのを感じて、俺は雅紀の首にしがみ付いた。

「とりあえずさ、着替えよ?」

雅紀が俺を抱きかかえたまま、階段を一段、また一段と昇って行く。

どうしてお前は、こんな俺のこんな姿を見て、笑顔でいられるんだ…

どうしてお前の腕は、こんなにも暖かいんだろう…
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