桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第8章 SAKURAI
「どうぞこちらへ」
翔さんがスリッパに履き替えると同時に、お手伝いの女性が俺達を家の奥へと促した。
「しかし凄いなぁ…」
ニノが溜息交じりの声も漏らす。
それもそうだ。
ここは俺たちの住む世界とはまったく違った、まるでお伽話かなんかの世界にいるような、そんな気すらしてくる。
多分、だけど大理石の床は綺麗に磨き上げられ、白を基調とした天井や壁には、塵一つだって見えない。
「やべぇ、俺、緊張してきたかも…」
俺はチリっとした痛みを感じて、腹を摩った。
「こちらです。どうぞ…」
細かい細工が施されたドアが開かれ、お手伝いの女性が俺達に向かって頭を下げた。
「ありがとう…ございます」
簡単に礼を言い、俺達は部屋の中に足を踏み入れた。
「まぁ、翔、久しぶりね? 元気にしてたの?」
如何にも品の良さそうな女性が駆け寄り、翔さんの頬を、綺麗な手で撫でる。
この人が翔さんの”お母さん”?
じゃあ、ソファーに座って新聞と睨めっこをしている、堅物を絵に描いたような男性は、”お父さん”ってことか…。
「あ、あの…、俺、いや僕は翔さんの高校の時の後輩で相葉雅紀って言います。で、こっちが同じく後輩で、二宮和也。今日は突然押しかけてしまって、すいません」
早口で捲くし立て、俺は頭を深々と下げた。