桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第8章 SAKURAI
暫くすると、再び玄関の方から女性がこっちに向かって走ってきた。
「坊ちゃんのご友人、で宜しいんですよね? でしたら、どうぞ? 旦那様も奥様もお待ちなので…」
俺達に向かって頭をペコリと下げると、そのまま玄関に向かって促した。
「どうぞ、こちらへ」
言われるまま開かれた玄関ドアを抜けると、そこに広がっていたのは、俺のボロアパートとは雲泥の差の、別世界が広がっていた。
「すげ…」
ニノの口から思わず感嘆の声が零れる。
「噂には聞いてたけど、ここまでとは思わなかったわ…」
確かにな…
玄関ホールだけで、優に俺の部屋がスッポリ納まってしまいそうだ。
圧倒されっぱなしの俺達は、広い玄関の、片隅に靴を脱いで揃えると、用意されったスリッパに足を入れた。
「相葉さん、翔さん…」
「えっ…?」
ニノに肘で脇腹を突っつかれ、ふと翔さんに目を向けると、靴を脱ぐことなく、スリッパに足を突っ込んでいる。
「しょ、翔さん、靴、脱がないと…」
お手伝いさんに聞こえないよう、こっそり耳打ちすると、翔さんは慌てた様子など全く見せず、スリッパから足を抜いた。
「あぁ、そうだったな? 忘れてたよ」
そう言って翔さんは子供のように無邪気な笑顔を俺に向けた。