桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第8章 SAKURAI
「ごめん、ごめんね、翔さん! 俺が混乱させるようなこと言ったから…。ごめん…」
腕の中で翔さんがフーフーと呼吸を繰り返すのを、俺はただ抱き締めることしか出来なかった。
苦しいのは…
辛いのは翔さん自身なのに…
俺は…
ごめん、翔さん…
俺の胸に顔を埋めて泣く翔さんの背中に回した手で、そっと小刻みに震える背中を摩ってやる。
すると荒かった呼吸が、少しずつ落ち着き始め、いつの間にか俺の背中に回した手で、まるで何かに縋るようにしがみ付いて来た。
良かった…
俺は運転席から事の成り行きを見守っていたニノに視線を向けると、小さく頷いて見せた。
もう大丈夫だ…、って…
「怖いんだ…。怖くて怖くて、仕方がないんだ…」
落ち着きを取り戻した翔さんが、俺の胸に顔を埋めたまま、ポツリポツリ言う。
きっと自分が自分でなくなって行く恐怖と、翔さんは闘っているんだ。
守ってやりたい…
でも俺に何が出来る?
ただこうして抱き締めることしか出来ない俺に、何が出来るんだろう?
「大丈夫だから。俺が付いているから」
言葉では何とでも言える。
でも実際は…
それでも今は…、今だけはそれが無責任な言葉だと分かっていても、言わずにはいられなかった。