桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第5章 R
「あのさぁ、俺思うんだけど…」
コンビニ弁当を箸で突っつきながらニノが言う。
「マンション行くのもいいんだけどさぁ、実家行ってみたらどうなの? その方が、何か分かんじゃないの?」
そっか、実家に行くって手があったか…
今と昔のギャップに驚くあまり、そんな簡単なことさえ、俺は考えられなかった。
「それにしても…」
いつも饒舌な、ニノが珍しく言葉の先を濁す。
多分言いたいことは、一つだろうな…。
「正直さ、俺もビックリしたんだよね…。余りにも違い過ぎるからさ…。でもさ、間違いなく“翔さん”なんだよな…」
俺は背凭れに背中を凭せかけ、一つ伸びをした。
「なに、寝不足ですか?」
「ん? まぁね…」
寝れるわけなかった。
だって、あれ程憧れ続けた櫻井翔が、俺のすぐ隣で…もっと言うなら、俺の腕の中で、そりゃ気持ち良さそうな寝息立ててたんだから…
おちおち眠ってなんかいられないよ…
「ひょっとして、まだ惚れてる、とか?」
「ち、違うって、そんなんじゃ…」
全く“ない”…とは、とても言いきれないよな、この感情は…。
でも…
「惚れてる、っつーよりは、やっぱ“憧れ”かな…」
俺は自分自身に言い聞かせるように言った。