• テキストサイズ

桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第4章 U


「飯、食わないんですか?」

俺の目の前で、俺を変な目で見て来るコイツは…誰だ?

「翔さん?」

“翔”…

それが俺の名前なのか?

「もしかして、腹、減ってないとか? だったら片付けますよ?」

目の前の男が、俺の前から食べ物を奪おうとする。

俺の物なのに…

「やめろ! 俺の物に触るな!」

怒声と共に、俺の目から涙が零れ落ちる。

「やめて下さい。お願いします…」

俺は白米がこんもり盛られた茶碗を、両手でしっかりと握り締めた。

そしてそれを手に、俺は席を立った。

キッチンをウロウロと歩き回り、玄関の上がり端に腰を下ろした。

「翔…さん? 何やってんですか…?」

えっ…
俺は一体何…を…?

どうして、俺は玄関で…?
茶碗を握りしめて、一体何を…?

「あの、さ…、飯、食うならこっちで食べない? そこ、寒いっしょ?」

言われた途端、コンクリートの冷たさが、素足の爪先から伝わってくる。

「あ、あぁ…、そう、だよ、な…」

ノロノロと腰を上げ、ダイニングチェアに移動した俺の手に、雅紀がスプーンを握らせた。

「慌てなくてもいいからさ、ゆっくりね? …取ったりしないからさ…」

悲しげに歪む雅紀の顔を見ながら、俺はゆっくりとスプーンを口に運び始めた。
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp