桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第14章 SAKURABA
いくつかの季節が巡った。
新しい仕事に就いた俺は、ヘトヘトに疲れては、倒れ込むように眠る…そんな日々を送っていた。
仕事に没頭することで、逃げていたんだ…
現実から…
翔さんから…
でもそれももう今日で終わりにしよう…
いつまでも逃げてるわけにはいかない…
数十段はあるだろうか…
長い石階段を、燦々と照りつける初夏の日差しに、俺は額に汗を滲ませながら登っている。
この階段を上り切った先のどこかにあの人がいる…
そう思ったら、不思議とその足取りは重くはなくて、それどころかとても軽かった。
両足は軽く痙攣を始めているのに…
「あっつ…」
全ての階段を上り切ると、俺はリュックからタオルを取り出し、頬を伝い始めた汗を拭い、ペットボトルに入れたお茶で水分補給を済ませた。
もう少しだ…
もう少しであの人に会える…
逸る気持ちを抑え切れず、俺は僅かな休憩を挟んで、また歩を進め始めた。
砂利を敷き詰めた小道を、一歩、また一歩と足を進めていく。
その脇には、もう花の時期を終えた桜の木が何本も立っていて、時折吹き抜ける風にその葉を揺らした。
ふと視線をその反対へと向けると、無数に立ち並んだ四角い石の数々。
ここだ…
ここにいるんだね?
砂利からコンクリート敷きに変わった脇道へと、俺は足を踏み入れた。