桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第13章 AIBA
翔さんのご両親は、井ノ原先生の薦めもあって、翔さんを暫くの間入院させることに決めた。
俺は迷うことなく、付き添いを申し出た。
完全看護だから付き添いは必要ない…
当然そう言われると思っていた。
でも、翔さんのご両親は俺の願いを受け入れてくれた。
昼間の時間だけ、の条件付きではあったが…
それでも良かった。
翔さんの傍にいられるなら…
たとえ僅かな時間でも、
たとえ言葉が交わせなくても、
翔さんと同じ時を、同じ空間で過ごせるなら…
それだけで良かった。
それだけで俺の胸は幸せに満ち溢れていた。
その分、夜アパートに帰ると、翔さんのいない部屋が酷く広く感じて、込み上げてくる寂しさを堪えきれず、一人涙を流した。
介護と言う呪縛から解放されて、気持ちは少しだけ軽くなったような気になっていた。
でも、それ以上に、翔さんが傍にいない事実が、虚無感となって俺を苛んだ。
夜ベッドに入ると、翔さんの匂いが染みついたジャンパーを胸に抱きしめて眠った。
それだけで、病院にいる筈の翔さんが、すぐ隣にいるように感じられた。
あの日、深夜に電話がかかって来るまでは…
『AIBA』完