桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第13章 AIBA
翔さんの症状が進むにつれ、介護する側の負担は増すばかりで…
ある時、暴れた翔さんを抑え込もうとしたニノは、突き飛ばされて床に転げた拍子に腕を強打した挙句、右肘を骨折した。
それでもニノは、少しでも出来ることがあるなら、と言ってくれたが、俺はそれを断った。
それ以上は迷惑をかけられない…
そう思ったから。
結果、俺はバイトを辞めた。
生活に必要な金や治療にかかる費用は、翔さんの貯金を使わせて貰うことにした。
本当は、出来ることなら手を付けたくはなかったけど…
俺が翔さんの傍にいるためには、そうするしかなかった。
悔しいけど…
「櫻井さん…、櫻井翔さん…」
名前を呼ばれ、我に返って俺は、車椅子のハンドルを握った。
「薬、貰おうね?」
耳元で声をかけるけど、翔さんの反応は…ない。
「お大事に」
袋に入った大量の薬を受け取り、代金を支払う。
保険が適用されてるとはいえ、けっこうな金額だ。
それでも精神障害者保健福祉手帳が受けられたことは、大きな助けになってはいるんだけど…
「買い物して帰ろうね?」
車椅子を押して病院の外に出ると、そこには少しくすんだ秋の空が広がっていた。
「今日は割と暖かいし、せっかくだから少し遠回りして帰ろうか?」
俺はいつもと逆の方向に向かって、車椅子を押し進めた。