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桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第12章 A…


その晩、久しぶりの遠出のせいか、興奮気味の翔さんは、ベッドに入っても中々寝付けない様子で…

突然奇声を上げたと思ったら飛び起き、見開いた目で辺りをキョロキョロと見回すと、何かに怯えるように身体を震わせては、またベッドに横たわる…

そんなことを何度も繰り返していた。

正直、俺も疲れていたし、寝かせてくれ…

そう思わないわけでもなかった。

でも、不意に翔さんの口から零れた「怖い」の一言に、俺は重い身体をたたき起こし、翔さんの震える身体を抱き締めた。

「ごめん、俺のせいだよね?」

俺があんな所に連れて行ったりしたから、だから翔さんは…

きっと忘れようとしても忘れられない、大野先輩に別れを告げられた時の記憶が、恐怖となって翔さんを不安にさせているんだ。

また捨てられる…

そんな風に…

「俺はずっと一緒にいるよ? ずっと翔さんの傍にいる」

俺の肩を濡らす涙を拭いてやりたくて、俺は少しだけ身体を引き剥がすと、涙に濡れた翔さんの頬を両手でそっと包み込んだ。

「一緒にいようね?」

「…智君…」

そう…、たとえその唇が俺の名前を永遠に呼んでくれなくても、俺はずっと翔さんの傍にいる。

そう決めたんだ。

俺は翔さんの唇に、そっと自分の唇を重ねた。



『A...』完
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