桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第2章 A
部活を引退した三年生を待ち受けていたのは、受験やら就職活動。
当然だけど、”部活”と言う唯一の接点がなくなった俺とあの人は、会話は愚か、顔を合わせることすら少なくなった。
たまに廊下ですれ違うことがあっても、あの人はいつも多くの友人に囲まれていて、俺は声をかけることを躊躇った。
あの人がどんどん遠ざかっていくような、そんな気がしていた。
もうサッカーも辞めてしまおう…
あの人のいない部活なんて、俺にとっては無意味でしかなかったから…
でも俺のそんな思いは、突然舞い込んだ”次期主将”の役目と同時に吹き飛んだ。
勿論俺には荷が重すぎると断った。
けど、俺を”次期主将”に任命したのが、他でもないあの人だったと聞かされた瞬間、俺は二つ返事でそれを受け入れていた。
あの人の願いだったから…
卒業式当日、俺は心からの感謝の気持ちを手紙に書いてあの人に手渡した。
手紙なんてそれまで書いたことがなかったから、文章なんて滅茶苦茶だった…と思う。
それでもあの人は嬉しそうに目尻を下げて受け取ってくれたんだ。
そして俺の肩をポンと叩いて言ったんだ。
「頑張れよ、雅紀」って…
それっきりあの人と会うことはなくなった。
あの人は大学に進学するため、この街を出て行ったから…
あの人…櫻井翔と会うことは、もう二度とない、そう思っていた。