第13章 百態
「月島さん。おはようございます。」
「おはよう。」
「すみません。先輩より後に現場入りなんて…」
本当は、話したくないけど。
一応新人の括りにいるから。
「別に時間に遅れた訳じゃないんだから、良いんじゃない?」
「ありがとうございます。」
「あ。そうだ!」
「入野さんって月島さんの彼氏なんですよね?」
「………別にどうだって良いでしょう。」
視線を台本に落とす。
「えー。怒らないで下さいよ。」
「入野さんと奏縞さんなら、美男美女だなって思っただけですよ。」
「私も頑張らなくちゃ!」
両手でガッツポーズして、笑いかけてみる。
ほら。出来た。
強がる事なんて、すぐ出来る。
私のことを良く思ってくれる人なんて居ないもの。
嫌われるならとことん嫌われてやる。
予防線を張り巡らせる。
この人には、これ以上何も渡したくないの。