第77章 待望
普段では考えられない程の人の波をぬって目指すホテルへ歩みを進める。
時折人にぶつかりながら、ようやく着いた場所。
ロビーに入れば強めに効かせた空調が汗ばんだ肌を冷やしてくれた。
ゆっくり深呼吸をしながら、スマホの画面を見れば部屋番号が送られているのを確認出来た。
数分待ってようやく乗れたエレベーターは満員で、引いたはずの汗がぶり返しそう。
何度かフロアに止まった後、ようやく指定のフロアに到着。
指定した部屋のインターホンを鳴らした。
ピーンポーン
呼び出すとすぐに開かれる扉。
少し口角が上がる達央さん。
「こんばんは。遅くなっちゃってごめんなさい。」
「いいよ。来てくれて良かった。」
扉が閉まると音と共に抱き締められた。
「本当に良かった…」
「来てくれて…本当に良かった……」
普段とは違う小さな声。
撫でられる頭。
梳かれる髪。
視線がぶつかると吸い寄せられるように触れるような口づけを交わした。