• テキストサイズ

逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第72章 仮寓


「そろそろ帰りますね。」

その声に気落ちしないと言えば嘘にはなる。

ただでさえ、負担掛けてるんだから。

帰りやすい空気ぐらい作らないとな。

「そっか。」

手元の台本をテーブルに置く。

「送るよ。」

「大丈夫です。まだタクシー捕まる時間ですし。」

「近くで拾いますよ。」

少しでも長くいたいんだけど…なんて言ったら…

困らせるだけだよな。

「それなら、乗るとこまでは送る。」

「大丈夫ですよ。」

「………送って行きたいところをガマンしてるんだから。」

「それくらい譲歩しろよ。」

オレってこんなに必死なんだ。

駄々こねてるガキみてー。

「…えっと…それじゃあ…お言葉に甘えていいんですか?」

「そうして貰わないと、オレの気が済まない。」

「では、宜しくお願いしますね。」

宥めるようにオレの腕をさすり、寄り添う。

離したくなくなるんだ。

本当は、帰したくない。

もっと、お前に触れて抱きしめて。

もっともっと深く触れ合いたい。

そんなワガママ。

言えるわけ無いよな。

/ 549ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp