第71章 伏目*
「……!」
どんなに声を出そうとしてもキミに声は届かない。
あんなにいつも笑ってたキミから笑顔が消えた。
泣きもしないし。
怒りもしない。
ただ…ただ…いつも別の場所を見てる。
ボクはここにいるのに。
ねぇ?どこを見てるの?
同じ未来を見ていたはずなのに。
いつから別の場所を見るようになったの?
手を伸ばしてもかすりもしない。
遠くから声が聞こえる。
真っ暗闇のこの場所からは、何も見えない。
それでも鮮明に聞こえる声。
これは?
…何?
………ねぇ?本当は気付いてたんでしょう?
…気付かなかったんじゃ無くて。
…気付かないフリをしてただけ。
…ねぇ?
…そもそも最初からキミの事なんて見てなかったんだよ?
…あの噂。
…ずっと聞いてたでしょう?
…本当はキミじゃなくて、あの人。
…そう。あの人。
…きっと今もそこにいるよ。
…本当は知ってるクセに。
…いつも逃げてばかり。
…目を背けるばかり。
…いつまでも帰ってくると思わない方がいいよ。
…いつまで目を背けるだけでいられるか。
…どれだけ我慢できるか。
…いつから変わるか。
…ここで見ていてあげるよ。
…