第71章 伏目*
呼び出し音が聞こえる度にボクの鼓動はどんどん大きくなる。
「はい…」
聞き慣れた声なのに背筋がしゃんとする。
『日菜乃ちゃん?』
ボクの声は震えてないかな。
『今大丈夫?』
声を掛ければ、「大丈夫ですよ。」と小さな声が聞こえた。
『何か元気無いみたいだけど、何かあった?』
「何でも無いですよ。元気ですよ?」
若干の違和感を感じるものの気のせいだと小さくうなずく。
「何か変ですか?」
そう問われてもこの違和感を言葉で表現するのは難しい。
『そう?何とも無いなら良いけど。』
日菜乃ちゃんが、何ともないって言うなら…これは気のせい。
そう自分に言い聞かせる。
電話の向こうから聞こえる声からしても外出しているのは明らか。
『今は家にいるの?お出掛け中?』
それでも質問するボクは意地悪かな。
「あ。えっと…友達と飲んでて。」
『そっかそっか。』
ウソじゃない回答にホッと胸をなで下ろす。
ここからが本題。
一度、小さく深呼吸をして話を切り出した。
『実はさ。今、良平さんと代永さんと飲んでて。』
『これから、大輝くんと江口くんも来てくれることになっちゃってさ-。』
『あっ!江口くんはどうでもいいんだけど。』
『それで別場所で飲み直す事になっちゃって。』
『だから、帰りが遅くなっちゃうんだ。』
『もしかしたら朝になっちゃうかも。』
路上を一人で歩いても、周りから聞こえる笑い声や話し声に感謝する。
電話越しに聞こえる日菜乃ちゃんのトーンは下がってる。
「あ。そうなんですね。分かりました。」
『志乃ちゃんも、お友達とゆっくりしてきて良いからね。』
「はい…ありがとうございます。」
「楽しんできてくださいね。」
『じゃあ、おやすみ。』
「はい。おやすみなさい。」
その声で通話は終了。
回りを見渡しても、もちろん皆いないよ。
店で別れて、大分経つし。
さぁ。
………ここからが本題。
キミは誰といるのかな?