第3章 憧憬
今日の撮影は一軒家を貸し切って。
お天気が良くて、庭での撮影も順調に進んだ。
外に置いたベンチでチワワを膝に乗せる。
「抱っこして、顔に寄せてみて?」
「はぁい。」
頭に頬ずりをしながら、カメラを見つめる。
視線を変えたり、口の開きを変えたり、ウインクしたり。
その間もすごく良い子で、外での撮影はすぐに終わった。
最後にもう一度、ギュッと抱っこして
「ありがとう。」
チワワに手を振って、その場を離れる。
さて。
次はメイクを直し着替えて、リビングへ移動。
テーブルに用意されたケーキに歓声を上げてみる。
「わぁ~。ケーキ♪」
「ありがとうございます!」
「いやいや。撮影用だからね?」
クスクス笑うスタッフさん。
(分かってますよ。それくらい…。)
「えー。でも食べて良いんですよね?」
フォークを手に取り、口元に寄せる。
カシャッ
(やっぱり撮りますよね。)
(私は求められてる事が分かってますから。)
紅茶を飲んだり、ソファーで雑誌を読んだり。
ベッドに寝転んでうたた寝したり。
半日掛かった撮影もやっと終わる。
「ありがとうございました~。」
「今日も可愛かったよ。」
「本当ですか?メイクさんのお陰ですね。」
「でも嬉しいです!」
「またよろしくお願いします。」
ペコッと頭を下げて、スタッフさんに御礼を述べてマネージャーの車に乗り込んだ。