第7章 当惑
「岡本さん!」
角を曲がってすぐに、岡本さんを見つけ声を掛ける。
「あ…おはよう。」
振り返ったその奥にあの人を見つけた。
カチッとスイッチが入る。
「月島さん…おはようございます。」
一瞬だけ視線を向ける。
「おはよう。」
その声を聞いて、すぐに視線を岡本さんに戻す。
「岡本さん。この前は、パンケーキ美味しかったです!」
なかなか言えずにいたお礼をこれ見よがしに伝える。
あの人がいる。
意識しない訳ない。
少しトーンを上げて、肩をすくめて両手を胸の前で軽く組む。
「あ…うん。」
フイッと逸らされる視線に今まで感じなかった違和感。
気のせいだと思いたい。
もしかして…岡本さんも…?
そんなこと無い。
ただの勘違い。
だって。手も繋いでくれたでしょう?
自分で自分の背中を押す。
「また連れてって下さいね!」
月島さんにわざと聞こえるように少し声を張った。