第66章 明星
深い微睡みの中、頭がぼうっとして夢か現実か分からない。
目の前に広がる世界は、よく見えなくて。
カーテンの間から微かに見える明かりで朝が近いのを確認する。
耳に届く息遣い。
刺激的なリップ音。
時折感じるチリッと痛む首筋。
フワフワと舞うような意識。
カラダの芯が燻る感覚。
「日菜乃…」
名前を呼ばれて、これが現実なんだとようやく確信を持った。
「信彦さん?」
寝起きで掠れた声が昨夜の情事の激しさを思い出させる。
「おはよう。日菜乃。」
「おはよう…ございます…今何時ですか?」
「5時前かな?」
「まだ眠い?」
「眠いです…」
「そっか…寝てていいよ。」
「止められないけど。」
そう言い終えると、耳たぶを甘噛みされた。
「っ…信彦さっ…何やってっ」
「起きたら日菜乃がいたから。ガマン出来なかった。」
「足りないんだ。」
「もっと補充しないと…今日一日頑張れる気がしない。」
「信彦さん…!朝からは…無理です…」
「大丈夫だよ。問題ない。」
腰に回された腕に力が込められ、引き寄せられる。
「信彦さっ!」
ギュッと目を瞑り、これから起こるであろう事態に備えた。