第62章 衷心
「着きました。」
立ち上げたラインに表示されるメッセージ。
「先に着いてる。」
そう送れば、顔を上げてキョロキョロと回りを見渡す姿に笑ってしまう。
「左だよ。」
手元に視線をとした後にこちらに気付いたのか走るヒナ。
「お待たせしました。」
「じゃあ、行こうか。」
前みたいに手は引いてくれない。
それでも構わない。
町中でも堂々と歩くアナタの後ろを歩く。
「はぐれるなよ?」
ちらっと見てクスクス笑う。
「子供じゃないんですから。」
「この前はピーピー泣いて子供みたいだったのにな?」
「うるさいですよ…」
こんなやり取りも懐かしい。
今まで通りに笑えるか分からないけど。
これからは同業者として。
仕事上の先輩として。
元に戻ると言うより、あるべき姿へ。