第60章 還御
玄関の扉が閉まると同時に壁に押し付けられた。
「岡本さっ…!」
合わせられた唇は荒々しくて。
血の味がするから唇が切れたんだろう。
「痛っ…んっ…」
手の置き場を探して腕を動かせばシューズボックスの上に飾ったモノに触れ落としてしまう。
ガシャン、パリンと壊れる音が聞こえても一向に止めてくれない。
「っ…はぁ…っ…」
時折漏れる吐息。
いつもなら名前だって呼んでくれるのに…
岡本さんをこうしてしまったのは私。
不安にさせた私が悪いの。
貴方が私を求めてくれるからそれに応えるつもりで帰ってきた。
貴方の空いたピースを埋めることが出来るのなら。