第6章 請願
指定された場所に着くと、すでに見慣れた車がハザードを点けてこちらを睨む顔を見つける。
「はぁ…」
大きく息を吐いて、後部座席に乗り込む。
「遅い。」
「はいはい。すみませんでしたー。」
「『はい』は、1回!」
「はーい。」
「伸ばすな!」
「本当に口うるさいですよね?」
「お前は、口ばかり達者になるよな?」
チラッとバックミラー越しに目が合う。
「友達が森本さんの事褒めてたから、見直そうと思ったけど撤回する。」
「水澤に見直されなくても支障は無いからな?」
ハハハッと笑って、アクセルを踏み込む。
「とりあえず、やるべき事をしっかりやれば俺は何も言わないよ。」
「出来て無いから、言うだけだ。」
「そうですかー。」
「台本チェックするので、黙っててくれます?」
「はいはい。」
「『はい』は、1回!」
「ったく……。」
チッと舌打ちの音が聞こえたけど気にしない。
舌打ちなんて、聞き慣れてるもの。