第57章 誹議
伸ばす手は空をつかむ。
引き留めたいのに、これ以上体が動かない。
「やり過ぎだよ…。」
自分でやった事なのに。
「信じてない訳じゃないんだ。」
不安な気持ちに勝てないだけ。
確かめる勇気が無いくせに。
遠回しに日菜乃ちゃんに言わせようなんて。
「情けない。」
こんなんだから、本当のこと言い出せないんだよ。
全然頼りにならないよね。
「こんなボクでごめん。」
いなければ、こんなにあっさり言えるのに。
「情けないボクでごめん。」
他に何か隠してるんじゃないかって疑ってる自分に失望する。
信じることしか出来ないのに。
それでも信じ切れない。
問い質す事すら出来ないのに…。
ボクはどうしたらいいんだろう。
何がしたいんだろう。
1つ言えることは……
日菜乃ちゃんを離したくない。
タツさんになんて…絶対に渡さない。
大きくゆっくり息を吐くと、ようやく動く体。
日菜乃ちゃんを探さないと。