第5章 翻然
岡本さんからのお誘いが実現する日。
珍しく今日は午後からオフの日。
岡本さんも午後からオフとの事で、待ち合わせは表参道にあるお店の最寄り駅。
仕事用のクローゼットから服を手に取り袖を通した。
白のワンピースに薄いピンクのカーディガン。
少し高めのヒール。
お花のピアス。
目の前のお店のショーウィンドウにうっすら映る姿を確認。
撮影で散々着て、仕事用に揃えた可愛い服。
好きじゃなかったこの服も悪くないと思える。
クルッと反転して、後ろ姿を映す。
「似合わなくは…無いかな?」
クスリと笑って、下を向く。
「よく似合うよ?」
聞き慣れた声。
「岡本さん!」
「いつから…そこに…?」
「えっと…クルっと回る少し前から。」
「それ……何で早く言ってくれないんですか!?」
「何だか微笑ましくて。」
目を細めて、抗議の視線を向ける。
「ごめんごめん。」
「じゃあ、行こうか?」
歩みを進める半歩後ろを着いて歩く。
人の波に流されないように岡本さんの傍を歩けば、間を抜ける空気が岡本さんの香りを届けてくれる。
バレないように、いつもより多めに息を吸い込んだ。