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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第51章 一笑


エレベーターを待つものの一向に上がってこない。

7階ぶんくらいなら階段使った方が早いかな。

そう思いエレベーターホールの横の階段へ続く扉を開いた。

空調も効いていない階段は少し熱い。

新しく下ろしたサンダルはヒールが高くて階段を下りるには不向き。

でもいつ来るか分からないエレベーターを待つのもイヤだし。

一段一段ゆっくりと階段を下りる。



数年ぶりにあった森本さん。

この数年間を思い出す。

人なんて数年では何も変わらない。

見た目は変わっても中なんてそうそう変わらない。

他の人はどうか分からないけど。

私は何も変わってない。

ずっと好きだった人と暮らせるようになったのに。

私は何がしたいんだろう。

あの時…私は……

そう思った瞬間にバランスを崩す。

「えっ」

踏み外した階段。

履き慣れた靴なら踏みとどまれたかもしれないのに。

ドタドタっと数段落ちた。

「イタタタ…」

小さな踊り場でペタリと座り込んだまま動けない…

膝は麻痺して痛いのかすら分からない。

少し離れた場所にあるさっきまで履いていたサンダル。

ヒールが外れてパカパカ。

「本当…最悪。」

本当に情けなくなる。

「はぁ…」

階段の手すりを伝い起き上がろうと力を込める。

「あれ…立てない…」

左足の感覚が無い。

額に滲む汗。

「どうしよう。」

スマホ!そう思いバックを探す。

数段上の階段に散らかるバックの中身。

もちろんスマホは…

手を伸ばしても勿論届かない。

「誰かー」

叫んでも階段なんて誰も使わないよね。

日中ならスタッフさんが通るかもしれないけど、今は深夜。

「このまま朝まで?」

長期戦になると予想し手すりに寄りかかる。

背中は階段だから寄り掛かれないのがツラいな。

時間が経つにつれて、感覚が無かった左足に熱を感じる。

「痛い…やっちゃったかな。」

見るからに腫れている足首と赤くなる膝。

指先で赤くなった膝をつつく。

「アザになりそー。」

意外に冷静な自分に笑えてくる。

「よし。考えても仕方ない。落ち着こう。」

うんうんと頷き瞼を閉じる。

最近よく眠れなかったせいか意識が遠のいた。





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