第50章 情調
瞼を開けばすやすや眠る岡本さんの寝顔。
リビングにいたはずなのに、ベッドの中と言うことは岡本さんが運んでくれたんだろう。
胸の中もモヤモヤは消えないけれど、私にはこうして好きな人の腕の中で眠れると言う事実を噛み締めないと…
背中に腕を回し胸元に顔を埋める。
肺いっぱいに空気を吸い込めば、少し落ち着いた気がした。
「ん………」
「日菜乃ちゃん…?どうしたの?」
ふるふると首を振れば、そっと頭を撫でてくれる。
「怖い夢でも見た?」
アレが夢ならどんなにいいか…
あのまま誰も来なかったら…
「よしよし。大丈夫だよ。ボクが傍にいるからね。」
背中をポンポン叩きながら、寝ぼけた声で歌を歌ってくれる。
「岡本さん…ありがとうございます…」
聞こえたか分からないけれど。
それでも構わない。