第50章 情調
「さっきから腕擦ってるけど寒いの?」
心配そうにのぞき込む視線に、ふと視線を落とせば両腕で両方の腕を擦っているのが確認出来る。
動かしていた手を止め、岡本さんの顔を見るものの居たたまれない気持ちでいっぱいになった。
「えっと…」
「エアコン消す?」
「大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
「本当に?どうかしたの?」
「何もないですよ。」
心を読まれないように、笑顔で何も無かったかのように振る舞う。
「そう?……一人で任せちゃったから疲れたよね。ごめん。」
隣に座り、そっと肩を寄せ合う。
その肩にもたれて瞼を閉じる。
「疲れてないですよ。こうして岡本さんの隣に居られるのが嬉しいだけですから。」
瞼を閉じれば急に襲ってくる睡魔。
意識は薄れ暗闇に溶け込むような感覚に陥った。