第43章 所期
待たせていたタクシーにスーツケースを積み込む。
「ありがとうございます。」
「うん。気を付けて行って来てね。」
ニッコリ笑う表情に自然と笑顔になる。
「はい。では、行って来ます。」
一向に動かない岡本さん。
「あのっ。岡本さん帰らないんですか?」
「ん?初海外の日菜乃ちゃんを見送りたいんだけど。」
「えー。そんな大げさにしなくていいですよ。」
首を振ると、岡本さんが私の腕に触れる。
「ほら。行って?」
「………」
「そんな顔しないの。はいっ。行ってらっしゃい!」
急かされるように背中を押され、タクシーに乗り込む。
「帰ってきたら、すぐにお土産お届けしますね。」
窓を開けて、話し掛ければ眩しい笑顔。
「うん。楽しみにしてるよ。」
「行ってらっしゃい。」