第41章 穏和
「岡本さん?」
僕の隣に座り、背中を擦る。
「大丈夫ですか?」
「具合悪いんですか?」
心配そうに顔を覗き込む。
「うぅん。大丈夫。ありがとう。」
「………岡本さん?」
「アドバイスなんて、大それた事言えませんけど…」
「私で良ければ話…聞きますよ?」
「あはは。参ったね…」
鼻をすすって、苦笑い。
「こんな姿見せたくなかったな。格好悪い。」
「日菜乃ちゃん。格好悪いついでにお願いがあるんだ。」
「抱き締めてもいいかな?」
そう言うと、日菜乃ちゃんは僕をそっと抱きしめる。
「あのね。」
「あやめさんが自由くんと結婚して引退するんだって。」
一瞬ビクッと震えたものの、今度は優しく背中を撫でる。
「分かってた事だけど…やっぱりキツいよね。」
「その辺割り切ってると思ったんだけど。」
「そこまで大人じゃなかったんだ。」
「幻滅したでしょう?」
「岡本さん…幻滅なんてしませんよ。」
「私も入野さんが好きでした。」
「今は、そうでも無いと思ってたのに、心から祝えるほど大人じゃありませんでした。」
自嘲気味に笑う。
「キミが自由くんを好きだったのは知ってた。」
「私も岡本さんが月島さんを好きだったのは知ってましたよ。」
お互いクスクス笑う。
「似たもの同士だね。」
数分抱き締め合い、離れる。
「よし。元気になったし、夕食はボクが作るよ。」
「何作ってくれるんですか?」
「オムライス!」
得意気に言えば、笑ってくれる。
キミの笑顔に助けられて来たんだよ。
ありがとう。