第40章 隠秘
「いい?」
朝のカフェテラス。
目の前には、カフェオレと食べかけのスコーン。
今日は天気が良いからテラス席に座ってみたけど、まさか声を掛けられるなんて。
顔を上げれば見慣れた顔。
「タツさん。おはようございます。」
「早いですね?」
イスを引いて、腰掛ける。
それと同時に店員さんが近づく。
「コーヒーお願い。」
すぐに下がる店員さんから視線を逸らす。
「8時。早くないだろ?」
「ノブは、もう帰ったの?」
驚きでタツさんを見上げれば頬杖を付いて、車道を見つめる。
視線をこちらに向けることなく話を続ける。
「一緒だったろ?昨日の夜。」
「俺、行ったんだよ。お前の家。……駐車場だけど。」
「いつも停めてるとこにノブの車があったから。」
「………。」
「別に責めてねーよ?ヒナは、俺の女って訳じゃねーし。」
「良かったじゃん。」
少し冷めたカフェオレに口をつける。
「何言ってるんですか…?」
「岡本さんとは…何とも…。」
手にしたカフェボウルに視線を落とす。
「お前さ。本当に分かりやすいな。」
「さっきから、顔…赤いよ。」
「昨日何があったかくらい想像が付く。」
「良かったな。」
優しい眼差しに微笑む表情。
「そんなこと…」
口から出る声は驚くほど小さい。
「ここまで来るのも長かったよな?」
「だから違いますよ。」
「ふーん。……まだカノジョにはなれないんだな…。」
「まぁ、今まで通り頑張れよ。」
届けられたコーヒーを飲み干し席を立つ。
「奢るよ。」
テーブルに置かれた伝票を指先で挟みヒラヒラと揺らす。
「これからも頑張れよー。」