第5章 翻然
雑誌の取材が、早く終わり空き時間が出来た。
この近くに気になってたお店があったんだよね~。
鼻歌交じりに薄日が差す通りを歩く。
「おっと。ここだ!」
小さいけど、可愛いお店。
木製のドアを開ければ、チリンと小さな鈴が鳴る。
店内には4人が座れるテーブルが二組。
「いらっしゃいませ。」
声のする方へ視線を向ければ、小さなショーウィンドウに色とりどりのエクレアが並ぶ。
見てるだけでも楽しい。
沢山のエクレアを凝視し見定める。
「えっと。」
「沢山あって迷っちゃうな…。」
心の中で言ったはずが言葉に出ていたようでクスリと笑う店員さんと目が合った。
「えーっと。」
「持ち帰りで。」
「この段のエクレアを一つずつお願いします。」
「1時間くらい掛かるので、保冷剤もお願いしますね。」
包まれるエクレアを待ちながら、カノジョの事を考えてしまう。
何を選ぶのかな?
イチゴ?
抹茶?
チョコ?
それとも他の?
いや。ちょっと待て…
甘いもの嫌いだったらどうしよう。
ジワリと額に浮かぶ汗を拭った。