第37章 乱脈
出て来たら、すぐに帰ろう。
渡されたタオルで髪を無造作に拭いた。
頭に被ったバスタオルからほのかに香る柔軟剤。
女の子の好きそうな匂い……。
ボクは直ぐにタオルを外し軽く畳む。
香りって理性を飛ばしに掛かるんだな…危険危険。
出されたコーヒーを飲みながら、ローテーブルの脇の雑誌のラックから見慣れた本を取り出す。
「写真集…本当に持ってるんだ。」
前に好意を寄せられたのは知ってたけど。
今はどうなんだろう。
さすがに、好きな男を家には上げないよな。
きっとボクは恋愛対象から外れたんだろうな。
そう思うと少し残念なような?
少しイラッとするような。
ボクは、この子をどう思ってるんだろう。
ふと視線をずらせばサインペンが目にとまる。
そのペンを手に持ち、写真集の表紙の内側に筆を走らせる。
気付いたら、どんな反応するんだろう。
悪戯心に火が付いた。