第37章 乱脈
5分ほど走ると結構濡れた。
車の助手席に座らせ、暖房を付けるものの冷たい風しか出てこない。
「ごめん。寒いよね。」
「いえ。大丈夫です。」
歯をガチガチと鳴らしながら、肩をすくめる日菜乃ちゃん。
「無理して走らせちゃったね。」
「お詫びに家まで送るよ。」
「そんなっ!ご迷惑お掛けするわけには行きません。」
「いやいや。ガタガタ震えてる子を駅に置き去りなんて、怒られちゃうよ。」
「迷惑じゃなければ…だけど。」
視線を前へ移し、返事を待つ。
「えっと…お言葉に甘えちゃっていいんですか?」
チラッと視線がぶつかると同時にボクは頷く。
薄手のトップスは、濡れて肌に張り付いている。
びしょ濡れの女の子を駅に置き去りにしたくないだけ。
ただ、それだけ。
大丈夫。
見なければいいだけなんだから。
行き先を聞いて、ボクはアクセルを踏み込んだ。