第37章 乱脈
「お疲れさまでした。」
何とかラジオの放送も終わり、帰り支度を整える。
「それで。何色?」
「達央さん、しつこいですよ。」
キッと睨めば、耳元で囁く声。
「今夜行くから。」
「………」
黙っていれば、今度は別の声が掛かる。
「日菜乃~。」
「櫻井さん。お疲れさまです。」
「何?何?内緒話?」
私と達央さんの肩に手を置きながら、間に滑り込む。
「もしかして、さっきの答えが聞かせてもらえるのかな?」
「はい?」
「日菜乃は、冷たいな…」
「あ。そうだ。俺もこれからヒナって呼ぶことにする。」
「は?」
「さっきCM中にタツがヒナって呼んでたし。」
「俺もそうするから♪」
フフンッと鼻を鳴らして、私達を追い抜く。
「んじゃ、またな~。」
ヒラヒラと手を振って、櫻井さんは出口へ消えていった。
「面白くねーな…」
ボソッと達央さんが何か言ったような気がしたけど、よく聞き取れない。