第32章 追憶
森本さんが帰ってくるまでの約2時間。
その間に私の髪は、驚く程の変化を起こす。
「へー。化けるもんだな?」
いつの間にか帰ってきたのか、腕を組みながら不思議そうにこちらを見る森本さん。
組んだ腕には複数の紙袋が提げられている。
そうですよね。
確かに私も驚きましたもん。
少し明るくなったカラーに緩いパーマ。
髪も少し短くなり、軽い印象のスタイル。
「その髪型だと、持ってる服は全部ダメだろ?」
「これ。買っといたから。」
「仕事の時は着るように。」
興味津々に紙袋を覗く佐久田さん。
「すげー。『プリティーウーマン』みたい。」
「出世払いで返済して貰うから。」
「もちろん、ここの支払いも。」
「ヒドいな…前言撤回。でも、すごく似合うと思いますよ?」
ニコニコ笑う姿に私も自然と笑顔になる。
「可愛くしてくれて、ありがとうございます。」
「また来ますね。」
席を立って、見送ってくれるスタッフにお礼を伝え手を振りながらお店を出た。